本文へスキップ

岩通ソフトシステム株式会社はソフトウェア開発からサービスまでをトータルで提供するソリューションプロバイダです。

ActiveX CTActiveX Computer Telephony

 このコラムでは、弊社の製品でも使用されているActiveX CTインタフェースの開発経緯などについて説明します。最初にお断りですが、筆者は2000年前後、岩崎通信機株式会社に在籍しており、その時にマイクロソフト株式会社が事務局を行っていたActiveX CT協議会に参加していましたので、その経験を基に説明させていただきます。そもそもが10年以上前の話で、古くて恐縮ですが、ご興味のある方に読んでいただけたらと思います。なお、説明には誤りがないように注意しておりますが、記述中に誤り等あればお知らせください。
 

ActiveXを使用したCTIインタフェースであるActiveX CTについて

 この節では概要を説明します。
 1990年代後半から2000年代前半には、CTI(Computer Telephony Integration)という技術が流行っていました。CTIとは簡単に言えばコンピュータから電話を制御したり、電話から得た情報をコンピュータに通知して顧客情報を表示するための技術です。通常は、交換機とコンピュータを接続して情報をやり取りしてCTIを実現します。このころは、多くの企業がコールセンタを持ち始めた時期であり、それがCTIの流行を牽引していました。

 このころにActiveX CT研究会が発足し、さらにActiveX CT協議会へと発展していきます。マイクロソフトは、Windowsをベースにした各種産業向けソリューションを提供する活動を行っており、ActiveX CT研究会、ActiveX CT協議会がその一環で設立されました。ActiveX CT研究会、協議会には多くの交換機ベンダやアプリケーション開発会社の方々が参加してCTIインタフェースの標準化を行っていました。

 この標準化活動の成果として、ACTコントロールとACTマルチラインコントロールが標準化されました。なお、ACTは、ActiveX CTという名称から名づけられています。
 一般会員は、私の知る限りで最盛期には300社弱が加入していました。研究会、協議会への参加費用は無料で、オープンなマルチベンダ環境の構築を目指しており、一般会員として加入することでACTコントロールの仕様書、ACTマルチラインコントロールの仕様書、それぞれのACTコントロール、それぞれのサンプルプログラムを入手して参加企業はCTIアプリケーションを無償で開発することができました。

 CTIというと海外から日本に入ってきたTAPI、TSAPIなどが有名でしたが、ACTは、日本で作られた標準であり、なんでもできるではなく、最小公約数+α的にもっとシンプルな仕様を目指したものであるため、10年以上経過した現在でも使用されており、とても良いインタフェースを提供していると感じています。

 なお、ActiveXは、登録商標ですので、正式にはActiveX(R)となりますが、本ページでは(R)の記述を省略しています。

ActiveX CT研究会

 ActiveX CT研究会は、1998年9月30日に発足しました。
 設立の目的は発表資料からの抜粋ですが、「ActiveX CTは、マイクロソフトの提唱する分散オブジェクトサービス技術であるActiveXを利用して、コンピュータテレフォニー分野で必要とされる企業の業務アプリケーションと通信システムとの連携をオープンなマルチベンダー環境で容易に実現することを目的とする標準化仕様です。このたびActiveX CT研究会を日本で発足し、標準化技術仕様策定のための最初の活動として、コールセンタシステムにおけるアプリケーションインターフェイスの策定を推進します。 」となっています。

 発足時の参加企業は、
・イースト株式会社
・沖電気工業株式会社
・クラリファイ株式会社
・東洋エンジニアリング株式会社
・日本アイ・ビー・エム株式会社
・日本電気株式会社
・株式会社日本ジェネシス研究所
・日本電信電話株式会社
・日本ユニシス株式会社
・日本ルーセント・テクノロジー株式会社
・株式会社日立製作所
・富士通株式会社
・三井物産株式会社
の13社(50音順)とマイクロソフト株式会社です。
 岩崎通信機は、この時点では、まだ参加していませんでした。

 発足した1998年9月30日から新たな会員企業を募集し、参加者は、「ActiveX CT研究会 ACTコントロール仕様書 Version 0.5」及びバージョンアップ版の仕様書の入手や仕様書への改善提案などが行えました。

 その後、ActiveX CT研究会は、139社の研究メンバを持ち、「ACTコントロール仕様書Version1.0」を完成させ、Active X CT協議会へと発展していきます。

ActiveX CT協議会

 ActiveX CT協議会(英語名:ActiveX(R) Computer Telephony Council、略称:ACT)は、ActiveX CT研究会の発展形として1999年6月24日に発足しました。目的は、発表資料によると、『コンピュータテレフォニー分野の業務アプリケーションや通信アプリケーションのインターフェイスに関する標準技術仕様の策定をすべく、1998年9月30日に「ActiveX(R) CT研究会」を発足し、139社の研究会メンバーで精力的な討議を行ってきましたが、このたび業務アプリケーションと通信アプリケーション連携の為のインターフェイス仕様である「ACTコントロール仕様書Version1.0」が完成したのに伴い、当標準化仕様の普及促進と、コンピュータテレフォニー分野に関する新たな標準化を目的として、「ActiveX(R) CT協議会」(英語名:ActiveX(R) Computer Telephony Council、略称:ACT)を6月24日(木)に設立しました。 』となっています。

 発足当時の参加企業は、協議会となって構成が少し複雑になっていますが、以下の通りです。

・幹事会員 16社
・一般会員 94社
・会 員 110社

○ActiveX CT協議会 幹事会員(16社)
・イースト株式会社
・岩崎通信機株式会社
・株式会社 エヌ・ティ・ティ エムイー
・沖電気工業株式会社
・東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
・日本アイ・ビー・エム株式会社
・日本電気株式会社
・株式会社日本ジェネシス研究所
・日本電信電話株式会社
・日本ユニシス株式会社
・日本ルーセント・テクノロジー株式会社
・株式会社日立製作所
・富士通株式会社
・マイクロソフト株式会社
・松下電器産業株式会社
・三井物産株式会社

○運営機関
代表幹事 三井物産株式会社
事務局 マイクロソフト株式会社
技術部会 部会長 沖電気工業株式会社

 なお、この時点で、ActiveX CT研究会が作成した「ActiveX CT研究会ACTコントロール仕様書Version0.5」は、「ActiveX CT協議会ACT コントロール仕様書 Version 1.0」にバージョンアップされ、さらに「ACT コントロール仕様書 Version 1.0」に基づいたSDKも配布されました。SDKには、ACTコントロールのソースプログラム、疑似テスト環境、サンプルプログラムなどが含まれていました。

 その後、「ACTコントロール仕様書Version1.0」は、第2.0版となり通話録音機能と位置情報機能が追加されました。
 また、ACTコントロールは、主にコールセンタのアプリケーションを想定していましたが、一般のオフィスで使用されるビジネスフォンを対象としたACTマルチラインコントロールも制定されました。

 なお、ActiveX協議会は、2002年のActiveX CT協議会ACT コントロール仕様書 2.0のリリースをもって活動を終了しました。

ACTコントロール

 ここでは、ActiveX CT協議会の成果物であるACTコントロールの特徴について簡単に説明します。
 ACTコントロールの基本思想は、コールセンタで使用する交換機が持つACD(Automatic Call Distribution;着信均等分配)機能をWindowsアプリから制御するフロントアプリケーションを作成できるということです。インタフェースは、交換機側のインタフェースであるサービスコンポーネントインタフェースと、Windowsアプリケーション側のインタフェースであるコントロールインタフェースの2種類のインタフェースを定義しています。

 この二つのインタフェースの使い分けは、交換機ベンダはサービスコンポーネントインタフェースに合うインタフェースを開発して提供し、アプリケーション開発者はコントロールインタフェースを使ってアプリケーションを開発するということになります。ですからアプリケーション開発者の方は、コントロールインタフェースさえ理解すれば、ACTコントロールに準拠した各種の交換機に対応するアプリケーションを開発することができます。実際には、交換機の動作は、機種によって少しずつ異なりますので、その差分を吸収する必要があります。

 その後、ACTコントロールは、次のようにバージョンアップされました。

 ACTコントロール仕様書第1.1版
 ナンバーディスプレイ情報の非通知理由の通知などの小規模なエンハンスが行われました。


ACTコントロール仕様書1.1版のサンプルプログラム

 ACTコントロール仕様書第2.0販
 通話録音機能、位置情報機能の追加と小規模なエンハンスが行われました。


ACTコントロール仕様書2.0販のサンプルプログラム


ACTマルチラインコントロール

 ここでは、ActiveX CT協議会の成果物であるACTマルチラインコントロールの特徴について簡単に説明します。
 ACTマルチラインコントロールの基本思想は、オフィスで使用するビジネスフォンの機能をWindowsアプリから制御するフロントアプリケーションを作成できるということです。インタフェースは、ACTコントロールと同じように、交換機側のインタフェースであるサービスコンポーネントインタフェースと、Windowsアプリケーション側のインタフェースであるコントロールインタフェースの2種類のインタフェースを定義しています。

 この二つのインタフェースの使い分けは、交換機ベンダはサービスコンポーネントインタフェースに合うインタフェースを開発して提供し、アプリケーション開発者はコントロールインタフェースを使ってアプリケーションを開発するということになります。ですからアプリケーション開発者の方は、コントロールインタフェースさえ理解すれば、ACTマルチラインコントロールに準拠した各種の交換機に対応するアプリケーションを開発することができます。実際には、ビジネスフォンの動作は、機種によって、また設定によってかなり変わりますので、その差分を理解して開発する必要があります。

 マルチラインやビジネスフォンは専門用語なので何の事だか分からないという方が多いと思いますので、少しこれらについて説明します。皆さんがオフィスで使用している電話機には、ボタンがたくさん付いていて、使用状態に応じていろいろな色でランプが点灯・点滅していないでしょうか? もしそのような電話機をお使いであれば、ここで言うビジネスフォンを使用していることになります。マルチラインという言い方は、専門的過ぎるかもしれませんが、ラインとは電話回線のことを示していて、一つの電話機でいろいろな回線の使用状況が見えるので、マルチラインと呼んでいます。実は、この呼び方は、交換機会社によってさまざまで、業界の中でも国内メーカー間や海外メーカーで話がなかなか通じないなんてこともありました。

 なお、仕様書は、ACTマルチラインコントロール仕様書第1.0販が最終版です。


ACTマルチラインコントロール仕様書第1.0販のサンプルプログラム